グロテスク 桐野夏生

グロテスク

グロテスク

7章まで読んだ後、最終章を読まずに図書館に返却するところだった!
その時点で、結論というかオチはないんだろうなと無意識に感じていたんだと思う。
結局、東電OL事件を題材にとりながら、人の見る目と自分の見る目とのズレの
恐ろしさを描いた作品。
なぜその事件が起こったのか、どんな背景があったのかということを、描いたものではまったくなかったんだと。
最終章を読まずして充分そのことを私は感じたから、読み終えた気になったのだと。
最終章を読んじゃったら、今度は百合雄の目で見た体験記が読みたくなったもの。
だからとても怖かった。
手記や告白、もちろん多少の脚色はあるだろうけど、ウソではないと感じたから。
それにしても、「わたし」の悪意は、もう感心するほど。
でもほんとうにコワイのは、悪意もなく、人を傷つけたり悩ませたりすることを平気でいう人だ。それで相手が傷ついたり悩んだり気にかけたりするなんてこれっぽっちも思わない人間。
そして言ったこと自体をすっかり忘れてしまう人。
悪意があれば対抗できるんだもの。