空中庭園 角田光代(当時はハードカバーで)

空中庭園 (文春文庫)

空中庭園 (文春文庫)

郊外にすむ家族それぞれを主人公に綴られる連作小説。
(その他の登場人物の目線で描かれているのもあるけれど)
連作って個人的に大好き。
だから、この小説も自分の肌にあうというかそんな感じ。

何でも包み隠さずオープンにして、秘密などなくそうという
この家族のモットー自体がすでに怪しい。
秘密、重大であればあるほどカムフラージュして、ささいなものは
あえてオープンにしてしまう。知られたくない秘密には話題にすら近づけない。
オープニングからそんなにおいがぷんぷん。
だから、この家族の内面の有り様だとか、実際に起きている出来事だとかが
次々と明かされていくのは痛いというよりはむしろこんなもんだよな、
と妙に納得してしまった。

なかでもパパが語り手となった「チョロQ」は妙にリアリティがあって。
あと、娘のマナちゃんが「2回ラブホに来ているのに私はいまだに処女だ」
という台詞(もちろんうろ覚えなのであしからず)にはなんだか悲しさを感じた。

ここんちのパパ&ママは私と同世代。
それを考えると、ますますパパの、「もし〜だったら?」という妄想は納得だ。
がんばろうとはいいたくないけど、何事も自分が選び取って生きてきたわけだから、
その中で自分が後悔しないようになっとくしながら生きていきたいとも思ってしまった。

でも、さりげなすぎて、きっといつか忘れちゃうようなお話だったりして。