アジアンタムブルー 大崎善生

アジアンタムブルー

アジアンタムブルー

前半の主人公の過去のエピソードと現在彼が置かれてる立場や生活ぶりとの絡み具合がまどろっこしく、また音楽絡みで物言うわけね、うざいわ、こんな男やだーなどと思いながら読んでいました。
が、しかし、葉子が本格的に登場し始めてからはグイグイ読ませるし、途中からはぽろぽろ涙が出て、最後までその涙は止まりませんでした。
前半の葉子に関する描写を読んだときもこんな女やだね、って思ったけど。
だって、デパート行けば必ず1階から最上階まで3時間もかけてめぐった揚げ句に欲しいものは買えないやーって愚痴る女なんて、最悪じゃあないですか。
水溜まりを撮るカメラマンていう設定も、うさんくさいというか、なんか計算してるというか。
そんな私の不満を一気に飛ばしてくれるのが葉子が金沢の病院に運ばれて主人公が駆けつける場面から。
猛烈に1日も早く結婚したい〜と思ったわけ。
そんなことはささいなことだけど、大切な人が死ぬということ、それが急にやって来てしまうときとは違う、じりじりそれに向かって二人で残り少ない時間を歩んで行く姿にジーンと来ました。
もちろん実際問題、ニースに1か月滞在とかは現実離れしてるとは思うものの、それ以上に自分が死ぬ立場、しなれる立場、それぞれで出来るかぎりのことをしたいと思わされる1冊でした。