フライ、ダディ、フライ 金城一紀

フライ,ダディ,フライ

フライ,ダディ,フライ

軽いんだけど深い作品。その深さの探り方、それ以前にその部分を探るか探らないかも読者にゆだねられている不思議な作品に思えた。
闘いの向こうにあるもの……それを見据えて闘う父、鈴木一(はじめ)さん。
同年代のお父さんたちに読んで欲しいし感想もききたい。
もちろん娘が被害に遭った暴力事件がきっかけで自分の無力さを知った鈴木さんと同じ方法ではなくても、自分に何か行動や言葉で示す術があるか確認するきっかけになるのではないかと思って。
それだけでもこの本の存在は意味があるような気がします。
それ以外にもさまざまな問題がちりばめられているけれど、それらを主張しすぎないのが金城一紀という作家の魅力なのでしょう。
「GO」の直木賞受賞や、人気俳優達主演で映画化された作品の輝かしい受賞歴を含めて、その騒がれ度合いで偏見を持っていたけどほかの作品も読み、ようやくその魅力がわかり始めたような気がしました。
私は、設定があり得ないとか、ご都合主義とか、こんなやついるかよ?という不満はよく持つタイプなのだけど、そんな設定でも描きたいことが伝わってくればそんなこともいやだと思えないものだなと、そう思わせない作品は優れているんだなと気づかせてくれた作品でもありました。