リアルワールド 桐野夏生

リアルワールド

リアルワールド

ちょっと評価甘くつけました。3個半が正直なとこ。

時節柄、未成年の犯罪に関する描写や心情について興味深く読みました。
でもこの本の場合は母親殺しだから話は違うんだけど。
この4人の女子高生の誰かにまたはそれぞれに共感できるか?と問われれば悩むけれど否定も肯定もできないというのが正直な感想。
自分たちが生きやすいようにそれぞれの立場で“武装”してる女子高生たち。
読んでいるときのストーリー展開のスピード感はあっぱれだ。
ただ、読み終わってみれば消化不良というのか、面白かっただけに時間が経つに連れフラストレーションがフツフツと増していく作品だった。
最初の隣のただならぬ物音を聞いてどうしたらいいか仲間たちに聞きまくったあげく無視するトシの気持ちや、テラウチの自殺の動機などなんだか結局わかるような?
わからないような?感じだし、ミミズが犯す犯罪については何も解決というか、オチが見られなかったのは残念だ。彼はキラリンとの出会いから急にその存在感がなくなっていくのだから。
何と言っても都合よく仕立て上げられた感のあるのはワタルの描かれ方である。
確かに彼の言うことはわかるし、ある意味逃げていないというか、そうだよね、実際はそんな思い方が現実的だよねっていうところが好感も持てる。
ただその説得力に今一つ欠けるのがそれまでの描かれ方の薄さ、つまりそれが1通の手紙でかたづけられてるところなんだと思う。
大人たちのいやな面は、もっともっと描いて欲しかった。
大人たちに知らしめるために。満員電車に乗せる親や、その周りの大人たちの反応、そして、遺書を見せろと強要する自分勝手な親の行動etc...
4人の女子高生たちは特に、もっと掘り下げて描いて欲しかった……(続編が出れば◎)のとミミズの起こした事件の落とし前をつけて欲しかった。
未成年の事件に関する記述は実際に起こってることと変わんないんだもの。
それにしても装幀装画で得してるよなあ。。でも“リアル”ってなんだろう?
結局良くわからなかったな。わかるはずないのかな??