痴情小説 岩井志麻子

痴情小説

痴情小説

確か週刊新潮の人気?コーナー「黒い報告書」だっけな、それが著名な作家の手にかかって生まれ変わったとかいう記事を読んだことがあって、その書き手のひとりが岩井志麻子だと知っていた。
ちょっと、ぴったりじゃん、と思って単行本化されるなんて知らなかったときは読みそびれたことをひそかに悔やんでいたのだ。
だって、“男女関係のもつれに端を発した実際の事件を題材にした煽情的な読物”なんだよー。
隠微という言葉がぴったりの。
それが、作家の手にかかるっていうんだから、盛り上がりもひとしお。
たぶん、本の少しの真実を元に9割は作り話と思われる、読み物なんだから作家の書きっぷりが楽しみだった。
で、岩井志麻子は(エッセイ以外)もう読まなくていいやと思っていたのに。
最初の1編はあらー? 何だかパワー弱いじゃないのぉ……と思って巻末の初出一覧をみたらば、あら、これは事件にもとづいてないのね、週刊新潮の「黒い報告書」ではなかったわけ。
小説新潮に掲載された作品と、「黒い報告書」が交互になっている。
黒い報告書ではないのだが、「朱の国」は「チャイコイ」もこれくらいの設定で書いてくれればいいのに、と思った。
それにしても、岡山出過ぎ。ベトナム出過ぎ。
岡山が、この人の個性だから仕方ないか。
でも、ベトナムはいくらでも他の国に置き換えられるのに。
(韓国を舞台にしたのもあったけど)
「黒い報告書」的には、やはり作家っぽさと、気取りが見えるけど、まあまあかな。
もっとどろどろして、犯罪の加害者被害者のアホさ加減が「黒い報告書」なんだけど。
1冊読み切ってみて、飽きた。週刊誌の1コーナーだからおもしろかったのね。
それにしても、これを1冊の立派な単行本として存在するなんて、岩井志麻子が作家として大物なのか、時代なのか? 複雑。