肩ごしの恋人 唯川恵

肩ごしの恋人

肩ごしの恋人

直木賞をとったわりには評判がイマイチで、期待せずに読んだが、まあまあじゃない? 軽くてわかりやすい。でもそれだけ。
るり子のような人種は、林真理子に書かせたら天下一品なんだろうけど、逆に隙がなくって、ダメだろうなー。
三回目の離婚を決意する、るり子の台詞はいい。
「信くんはわかってない。(中略)この女がいらないって思うものを私が欲しがると思う?……」
またここに、女と向きあっていない男がいるんだよね。情けない。
とにかく、登場人物の誰にも共感なんてできないんだなーこれが。
萌の「男もセックスも好きだけど信用していない」の言葉はズーンとくるけど、トラウマのせいにはしないで欲しかったな。決定的な理由なんていらないよ。
崇くんの家出の理由の真相は、予想がつかなかったけど、当たり前のことをあんなふうに書くのは好感が持てた。
るり子を嫌な女として描かれているのかもしれないけど、私は萌の方が嫌だ。
柿崎とのつきあい方も、素直じゃない。なのに、好きとかいうな!
ラストでは、おいおい、「妊娠小説」じゃねえかっ!とつっこんでしまった。
それにゲイの存在はどうなんでしょう。
文ちゃんのゲイになったのは「(トラウマのせいでなく)自分の意志でなったのよ」
と言う言葉は、ゲイという設定でないと伝わらないのかな。
でも、読後感は良く、崇くんの行く末は応援したくなるし、崇くんとの別れはちょっと、うるうる来た。こんな男の子はどこにもいないとわかっていながら。
ほんとに大衆向けの、当たり前のことを、わかりやすく書かれているというだけ。
わかりやすいことは大歓迎なのだが、あまり後には残らないだろうな。
娯楽小説としては良く出来てると思います。だから直木賞なのかな?
でも、これで直木賞なのか?という疑問は残るけど。

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れんれん > 最後に見せたるり子の萌に対する優しさは、意外でもあり頼もしくもありさわやかな読後感を与えてくれました。 (2003/11/26 02:19)
ふりすか > れんれんさん、レスに気づかず、すみませーん。ラストのるり子、少しは現実(?)をみてたくましくなったのか?と思うものの、学習能力に欠けてるのは簡単に治りそうにないぞ、とうがった見方をしています。 (2003/11/29 09:53)