号泣する準備はできていた 江國香織

号泣する準備はできていた

号泣する準備はできていた

やっと、読むことができました。ほんとは★3個半です。
数日前に直木賞をとって、芥川賞の面子などが記憶に新しい。
そのせいかどうかは良くわからないんだけど、なんとなく「いつか記憶からこぼれおちるとしても」みたいな女子高生ものは、もう、江國さんが書くべきテーマではないんだなあーというか、大人のお話を書いてくれたほうがしっくりするというのかな、正直に言えば、年取ったな、大人になったな、と感じた。
きらきらひかる」や「落下する夕方」みたいな勢いというのかな、そんなものは、もう書けなくなっちゃんたんだな、って。
それくらいこの二作品は、私にとって衝撃的だったってことなんだろうけど。

ときどき引用したくなる、なんでもない表現があったり、がむしゃらでない(一生懸命でない)主人公の女性たちのたたずまいがいい。
たしかに、雰囲気で書いてしまっているような色が濃いし、流されてる具合が物足りないというのもあるけれど、だからといってキレイゴトだけをならべているのではなく、変に激しくドロドロとしているわけでもない。
こういう作品は、やっぱりどこを切っても「江國香織」だと思う。
そういうところは感心しています。

「煙草配りガール」のある二組の夫婦の姿を比較してかいている目線とか、「熱帯夜」での2人の関係や不安定さは、関係のちがいはあれど、自分にも感じられるし、とにかく、様々な立場の主人公のおはなしたちなのに、なぜかどれにも、少しずつ共感できる部分があるのは不思議。
ラストの「そこなう」は、もう、イライラしたけど印象に残ったかな。
だいたい、このふたりは十五年もどういうつもりでつきあってきたのだろう?
男にも、女にも腹が立つ。
別に不倫じゃなくても、もっと心構えというか、自分たちのスタンスを十五年もつきあってれば確実に自分の中に持てるんじゃないのかなぁ?
そういうの、あっていいんじゃないのかなあ?って。

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エリコ > 「熱帯夜」の最後の文章がとても好きでした。どんな背景を抱えていても、くっついて眠るふたりは空から見れば幸せで温かいんだなというか、そんな感じで。
「そこなう」の15年は、すごいですよね。
きっとスタンスも心構えもあるはずだったんだけど、結婚していた男にとっては離婚成立はスタートで、でも待っていた女にとってそれはゴールで、ふたりのズレはそこが大きいんじゃないかなあという気がしました。 (2004/01/28 02:56)
ふりすか > そうか〜。スタートとゴールね。やっぱり、結婚してる男にとって、中の女と外の女では、やはり立ち位置が違うと思っているのよね。。もちろん逆も然り。 (2004/01/28 09:52)