残虐記 桐野夏生

残虐記

残虐記

ほんっとに桐野夏生という作家は、人間の中に潜む影の部分、「悪意」をコワイくらいに隠さずに描く。
ただこの作品を読んで、実際に起きた新潟の女児監禁事件を思い出し、これでいいの?って違和感を感じたのは事実。
だって、そういう目で見られるのがお門違いといっているのであって、もしや、それを自覚させようとしているのかな?

あーとにかく事実と、想像の世界、それの入り交じり方が怖くてしょうがない。
少年犯罪や、子どもがたくさんいる場所を舞台にした犯罪が起きるたび、「児童の心のケアをするためカウンセラーを配置」とかいうニュースが伝わるけれど、ホントそれで救われるのか?
この子のように、同じ想いや立場におかれた者にしか、わかりあえないんじゃないかと思う。つまりケアなんてできるのかな、と。
救うためにわかりあう必要はないのだろうが、やはり偽善の匂いはぬぐえないと思う。
なんとなく、この主人公の気持ち、すごくわかるような気がした。
最後のオチで、夫の正体がわかったときも、さすがだな、と。
密室での想いはケンジに、現実の世界での想いはその夫に。
失踪して、生きているなら、なにを考え何をしているのか、さらに知りたくなった。
お互いが違う意味で共犯者なんだもの。