ビューティフル・ネーム 鷺沢 萠

ビューティフル・ネーム

ビューティフル・ネーム

私は鷺沢 萠という“存在”が嫌いだった。
作品も読まず批判するのは卑怯に違いないが“存在”が嫌いなのだからまあ、嫌いな芸能人を見たくないというのと同じ心理だったと思う。
20年近く前の話になるけど。
で、エッセイは読んだことはあるけれど、私にとって初めて読む彼女の小説だ。

在日韓国人の話というのは読み始めてすぐにわかるのだが、その時点で「在日かよ。。」って正直いやーな感じをうけた。
なぜ、鷺沢がそこにこだわるのかもわからないし、だいたいそのことを題材にするってどうも私にとっては被害者意識の主張じゃん! としか思えない作品や表現にしか出会っていなかったから。
金城一紀をのぞく)
「ビューティフル・ネーム」は3部作の予定で、3作目の書き出しが二通り、もちろん未完なんだけど、あーなんで死んじゃったの? と残念としか言い様のない気持ちになった。
2作まで読んだ時点で、とても好印象を持ってしまったからだ。
ものすごく現実的な在日の“感情”を描いていて、押し付けがましいアピールをしていなかったから。
「眼鏡越しの空」の後半で、民俗衣装(チョゴリ)を来て通学していた女子学生が電車の中で、刃物で衣服を斬られるという事件について語られている。
民俗衣装を着てる方が悪いという発想の理由を“日本に対する拒否感みたいなものを感じる”からという主人公の友達の発言がまさに私の気持ちを表しているものだった。
変な例えだけれど、手話を習っていたときに、聴覚障害者と健聴者の関わり方について考えたり話したりすることがあった。
そういうときにいつも壁を感じていたことはそういうことだったんだ。
と簡単なことなのにストーンと胸に堕ちてきた。
この2篇を読んでビックリするほどいろいろなことを感じ、思い出した。
ふつーに親や、大人、世間に反発してしまう10代にも読んで欲しいし、もちろん大人たちにも。

そして「春の居場所」。未完なのが残念で仕方ない。
ストレートな表現がここちいいのだ。「途轍もなく好きだ」とか。
居場所を確保するために結婚したことを後悔する記述で終わっている。
残念で仕方ない。
そして、鷺沢萠の作品との出会いが遅かったのを後悔するも、たぶんそれ以前の小説を読んで好きになったかというと怪しいので(苦笑)余計に彼女の“これから”に出会えないことが悔やまれる。
★は5個つけたいところだけど、未完だからね。

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まゆ > 鷺沢さんが「在日」にこだわったのは、ご自身にも韓国の血が流れていることを知ってからです。そのこだわり方の是非については、私には判断できませんが。この本、買ったけれどまだ読めずにいます。 (2004/07/25 22:56)
ふりすか > まゆさん、こんにちは。鷺沢さんに韓国の血が1/4流れていることは知っているのですが……。「在日」ではないですよね。もし自分がそうだったら?と考えてみても、ちょっと良くわからなくて、こういう書き方をしてしまいました。 (2004/07/26 11:30)