イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子

イッツ・オンリー・トーク

イッツ・オンリー・トーク

やや、また気になる作家の出現だよー。
表題の「イッツ・オンリー・トーク」は、主人公がいきなり蒲田に住むことを決めるところから始まる。
かんたんに言ってしまえば、人生に挫折して投げやりに生きてる雰囲気の30代女性と彼女を取り巻く、風変わりな人々との関わりが描かれています。
主人公の投げやりなんだけど、ほんとうはとても生きることにもがいていて、それが突き放したような、どこまでも冷めているようなそうでないような、そんな文体で綴られていて、引き込まれました。蒲田という舞台にのった、この物語に。
「第七障害」は、登場人物たちが「イッツ〜」に出てくるアクの強い、個性的すぎる人々とは違う。
競技中の落馬で、馬も負傷し安楽死。仕方のないこととは頭でわかっていても感情ではそうもいかず、馬の死は自分のせいだと思い悩む主人公。
そんな中、恋人の浮気で生活を変えてしまうんだけども、少しずつ、立ち直っていくのよね。地味〜に、一歩一歩の歩幅も狭い感じなんだけど、着実に、自分のペースで。とても好感のもてる読後感だった。