水の繭 大島真寿美

水の繭

水の繭

おもに家族との人間関係から、ある種の精神的引きこもりっぽい20歳のとうこが簡単にいえば、幼いころの母親と双子の兄弟との別れ、父との別れ、
従妹瑠璃との再会による同居、思い出の場所に引越してきた夫婦との出会い、関わることにより、過去を見つめ直し、自らの人生を切り拓こうと思えるまでの精神的な回復を描いた作品。
何か、感想を書くのが非常に難しいんです。
人生の逆境に遭遇してしまうと、とうこのようになってしまうのもわかるし、そうやって周りの人との関わりで元気になるのもとてもわかる。
主人公の冷めっぷりもいいし、元気になり方も極端ではないので、自然に受け止めることができた。
お祖母ちゃんのキャラもいいなあと思っていたのに、最後にちょっとあれ?
ってなこともあり。
それは、見え隠れするはっきり描かれていないところにある厳しい現実のひとつが明らかになったといったところかな。
それより、お父さんが亡くなったのは、どうやら精神安定剤らしき薬物の過剰摂取が理由みたいだけど、故意なのか、そうじゃないのかは明らかでない。
なんとなく、その死因が『かなしみの場所』の「離婚の原因」とおんなじような扱いで、気になった。
あと、ケチをつけるわけじゃないけれど、セージのエピソードはいらないんじゃないかなあ。
そんな「特別な力」を借りなくても、とうこは再生する方向に進めたんじゃないかと思う。
限りなく★3つに近い評価です。