弱法師 中山可穂

弱法師

「レスリー・チャンに捧ぐ」という献辞があります。

表題の「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」の３編が収録。
予備知識なし、女性同士の恋愛沙汰が描かれているのかな？程度の認識しかもたずに読んだところアタリだった〜。
あらすじ知らなくて良かったかも。
だって、あらすじ書いちゃうとものすごく陳腐な設定に思えて読む気が起きなかったはず。
実際ありえな〜いっていう出会いや設定なんですが、受け入れちゃうっていうか、この人の力でひっぱりまくられてしまったのでしょうね。

「弱法師」は、何だか女性が書いたものとは思えないというか、男っぽかったです。
男の弱さを見せつけられました。サクちゃんではありません。
（サクちゃん……ついセカチューを思い浮かべてしまう・苦笑）

「卒塔婆小町」
これはつい美輪明宏さまを思い浮かべてしまうのでした。
タイトルにこじつけるためにホームレスにしちゃったんでしょうが、回想のお話が強烈だっただけにもっと普通の設定で良かったような気もします。
ま、しかたないか。

「浮舟」
最後は泣かせる。碧生が痛々しすぎる。っていうか大人たちしっかりして〜。
それぞれの想いを考えるとぎゅぎゅーっと胸が締めつけられるような。
生きるということについても考えさせられたからかもしれない。
家族とは何か、そのあり方についても。

考えてみれば、どの主人公にも共感できないし、私には到底考えられない関係性や設定で書かれているにも関わらず、もっと根本的な部分で自分の土俵に立ち戻って誰もが何かを考えさせられたり感じたりするんじゃないかと思わせる不思議な作品。
それでも、やっぱりほんとうのところまでは私にはみえることはないのだろうと思う。
献辞がそれを暗示していたんじゃないだろうか。