『対岸の彼女』角田光代

対岸の彼女

対岸の彼女

何だか感想がまとまりません。

30代の子持ち専業主婦(小夜子)が同い年の女社長(葵)が経営する会社で仕事を始める。
その現在と、葵の高校時代の出来事が交互に描かれ、最初は戸惑うものの、最後にオチがちゃんと待っていた。

今はやりの(?)負け犬、勝ち犬の図式か・・・・・・というのは見せかけで、ここにちょっとしたあざとさを感じてしまうのだけれど、女としての人とのかかわりあい方、年を重ねていくことを、嫌でも考えさせられてしまう。
友人(30代独身)の一人が言っていた言葉を思い出す。
結婚して子どもがいる友だちとはあんまり会いたいと思わなくなった。
一人ならまだしも相手が複数の子持ちだと、子ども中心の話題で価値観も固定されるし、変に気をつかわれるのも居心地が悪いと。
ああ、なるほど。私も高校時代の仲良し4人とランチをした時に感じた居心地の悪さもこれなのかな。
1対1の時は感じなくても、1対3になると、仲間外れじゃないけれど、自分が異物になって溶け込めない気分になってしまう。
もちろん相手に悪気なんてないし、仕方のないことなんだけど。

「全身で信じられる女友達を必要なのは、大人になった今なのに」
そうなのかもしれないけれど、現実は、無理と言わないまでも、簡単ではないということもわかっているんだな。
私は一人が好きだし、一人でも平気と思えるのは--グループに属さなくちゃいけないとか、友だちが少なくても焦らないという意味--私を理解してくれる家族と、数少ない友だちのおかげなんだなあとしみじみ思う。
小夜子の外に向けた(外側)人間関係中心に描かれているなかで、時折印象的に挟まれる無理解な夫や夫の母とのエピソードもなかなか面白い。
でも、なんでこんな夫と結婚したのかなー。やっぱり逃げるためだったのかなあ。
こちら(内側)もどんどん(開発?)しちゃえと思う。
しかし、いろんな場面で本当にリアルな描写をするよね、と思う。
これまではフリーターみたいな情けない大人の視点を描かせたら天下一品だよね、と思っていた角ちゃんも、主婦、社会人の世界まで、こんなにいやーな気分にさせるほど描けるんだもんね。すごいなあ。容赦ないわ。

忘れちゃいけないのが、葵の高校時代のエピソードに出てくる、ナナコの存在。そして、当時の葵の人間観察眼。これもまた、鋭い。