『しかたのない水』井上荒野

しかたのない水

しかたのない水

あるフィットネスクラブを舞台にした人間模様と書いてしまえばものすごく陳腐なイメージだけど、何の接点もない人たちが、同じ目的で集まる場所という点ではとても適した場所だろう。
参加するのも抜けるのも、濃くも薄くも関われる場所。
私の好きな短編連作・・・・・・お話ごとに主人公はバトンタッチをして、少しずつ場所や時間をリンクさせる。
読んでいて、とても、ざらざらした感じというのかな。
砂をはたき落としたいのに、その手に付いた砂がなかなかとれない、イヤーな感じ。
登場人物の誰も好きにはなれなくて、近寄りたくない、そんな場所と人たちの集まり。
むなしさを強く感じるのは、語り手になる登場人物たちみんなが、物理的に深い関わりのある相手がいても、精神的には当事者以外の人を強く求めているせいなんじゃないかと気づいた。
井上荒野は嫌いじゃないんだけど、どうも、この作品は読んでる間も、読み終わっても、気持ちの悪さがつきまとっていて好きになれないな。

でも、この本を読んでフィットネスクラブに毎日日課のように通いたくはなった。
もちろん他人と関わりたいなんてこれっぽっちも思わないけれど、主婦が夫を送りだした後、クラブに通い、午後は家事(+子育て)をこなすという無駄のない(?)生活をまねしたくなったから。
だって、そのおかげで誰が見ても、その体型は、37歳子持ち主婦に見えないんだって!