『花伽藍』中山可穂

花伽藍 (新潮文庫)

花伽藍 (新潮文庫)

短編集です。巻末の解説でも触れられていたけれど、登場人物がみな“普通”の人々で、レズビアンに限らず、喪失感をどう埋めるかというのは身近な問題なところが、割とすっと読むことができた。

  • 「鶴」

思わずこのノン気の人妻に対して、君は冬香かよっ?と突っ込む自分がいました。
ごめんなさい。明らかに読み方を間違えています(恥)

  • 「七夕」

とても素敵な一夜ですね。こういう時間のことはずーっと忘れないだろうなあ。
自分の気持ちを再確認できてよかったね、と思う。
でも、この男、人当たりは柔らかいけど危険な男だよなあ。
自分の夫だったら許せんな。

  • 「花伽藍」

うーん、ちょっとどうなのかしら? いい話かもしれないけれど、誰にも感情移入ができません。
いくら人当たりがいいとはいっても、元夫にそこまでやるか?
女が一人で生きて行くのは大変なんだぞ。
なんか主人公の甘さにイラつく。
それに、唯一魅力的なキャラのユリちゃんを、無理矢理ビアンにしなくてもいいのでは?と思ってしまう。
でもそこが中山可穂たる所以なら仕方ないのかなあ。

  • 「偽アマント」

これが1番好きかも。仁子のキャラがいいし、普通の恋愛小説として読めるうえに、
バイとかビアンとかの設定でも自然。

  • 「燦雨」

これはコワイよー。40代で恋に堕ちて、片方は家庭も捨てて二人で生きていく。
やがて、介護する側とされる側になるという容赦ない現実。
もちろん女同士だけじゃないけれど、二人が一緒になったいきさつを考えると胸が痛む。
一緒に死ねるって究極の幸せなのかな。私は、少なくとも先立ちたいとは常々思っているけれど。
・・・・・・「失楽園」(違)かなり汚染されています(爆)