『明日の記憶』荻原浩

明日の記憶

明日の記憶

何だか、久しぶりに普通の、正統派というのかな、そんな小説を読んだ気がする。
余談ですが、これも「鈴木成一デザイン室」。図書館本なので、また、カバーをめくることができない(涙)
若年性アルツハイマーと診断された主人公の生き様は哀しいとしか言い様がない。
広告代理店勤務とはいえ、平凡な中年サラリーマンとして描かれており、娘の結婚まで会社にしがみつくさま、少しでも長く覚えていたい、失う記憶をこぼさないようにもがくさまは、痛々しくも、リアルだ。
それに、主人公を取り巻く会社や取引先の人間関係、心のよりどころにしていた陶芸教室の先生の裏切り、そして、妻の痛々しさまでも。
忘れることは、ある種の死。生きていることが確かに感じられないのだから。
忘れられることは、どんなことより辛い。憎まれてでも覚えておいて欲しい、せめて記憶の中では、生きていたいと思うよね。
途中、辛いことには違いないけれど、生きているからいいじゃない、アルツハイマーがすすむまで、家族は覚悟ができるじゃないの。なんて、感じたのも事実。
ラストも、ちょっと美しすぎるなあ。

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さんど > 美しすぎるラストで救われた、救いようのない話、ですね。記憶を失っても残るものはあるのかと、考えさせられます。物忘れ、については、結構、身に思い当たることが多くて、怖くなりましたね。わりと身につまされた人も多いという、不思議な小説ですね。 (2005/04/20 17:25)
ふりすか > そう、美しすぎるラストの影に見え隠れする現実。怖いなあと思いました。想像がつきやすそうで、そうでもないかんじ? むずかしいです。 (2005/04/20 23:24)