「結婚失格」枡野浩一

結婚失格

結婚失格

単に枡野さんがご自身の離婚問題に対して鬱々と小説風に
(フィクションを交えて)つづっただけの作品だと思ってました。
だって、「驚愕の同時進行小説」ってうたってるし。
なら、なぜ読む?(爆)

でもちょっと想像と違いました。
「書評小説」ということで連載されていたものがまとまって、
充実したおまけ(あとがきと、解説にかえて)付(笑)。
毎回1冊本が取り上げられていて面白い仕組みでした。
ストーリーの流れに無理なく組み込まれているし。
評してるかどうかは実際微妙といえなくもないけどね。
やはり離婚問題がベースになってるわけで、その点は予想通り。

あとがきで谷田くんという人物が枡野さんに物申しているのですが、
まったくもってその通りで、こういう人が身近にいることを
感謝したほうがいいよって思った。
実際そう思ってるはずでしょうけど。
>何もかも書いているわけではない。
>ただ、ここまで書いてはいけないと感じるラインが人とはズレているらしい。
ということもいまさらだけど認識したみたいだし(苦笑)

>元妻とのことも、あんなに方々に一々書かなければ
>子どもにもちゃんと会わせてもらえるのにって、
>みんなに言われますよ。でもそれは私にはできない選択だったんです。
>そういってくれる人に悪意はないんだろうけど、
>僕と同じ立場になったら、絶対そうはできないだろう思う。

とか、

>コラムの連載で、離婚して会えなくなったこどもに会いたいという、
>たった一つのことばかり毎週毎週書いてしまったのは、
>それしか書きたいことがなかったからだ。

って、あんたやっぱりわかってないね…って私は思っちゃいましたよ。
悪意なんてないよ、呆れてるだけ。
「枡野と同じ立場? ふつうならないよ……」って言われてるしね。同感!
書きたいことだけ垂れ流すって、プロじゃないよね。
そういうところが積み重なっていやになったんだろうなあと。
嘘でも何でも言って子どもを離さない姿勢の元妻のほうが何倍も共感できるよ。
本当に会いたいなら、自分ではできない選択だとか、
甘っちょろいこといってんじゃないよ!
会いたいなら、自分殺しなさいよ!って。
子どもだって喜ぶと思う? こんな書き方されて。
仕事に訴えるな。

巻末の穂村さんの寄稿が気が利いています。ちょっと見直しました。
あとがきと、解説にかえての文章と、書評小説という形に☆3つです。