「黄色い目の魚」佐藤多佳子

黄色い目の魚 (新潮文庫)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

☆5つつけたいところだけど、正直に言うと4個半ってとこ。

読み始めたら、あれれー? これって短編だったの?と思ったら違いました(笑)
でもつかみはばっちりでした。

>ひとりでは見えなかったこと
>ふたりだと少しだけ見えてくる
>だから今は一緒にいたいんだ。

>16歳のふたり、
>かけがえのない物語。
以上文庫の帯より。


私の高校のころは、制服もなかったし、お酒も飲まなかった!!
炭酸がダメで、おいしいと思わなかったのよねー、何がきっかけで飲むようになったのかしら?
主人公のみのりがオジサンちで秘蔵のモルトを飲むというところで秘蔵ってなによ! 高校生のくせに!
飲み方教えてあげなさいよ……などと、どうでもいいことにテンションが上がってしまう場面もありました(汗)

余談はさておき「しゃべれども しゃべれども」に続いて読んだ佐藤多佳子作品ですが、もはやこの年代の子の親世代に身を置く者としては、とにかく若さがまぶしい。
悩みもがく姿が切ない。胸キュン。
高校生の恋愛はこうであって欲しいと切に願ってしまう。
というか、子どもがいたら、愛だの恋だのぬかすならこれぐらいの恋愛せえや!
と言って渡したい(爆)
そうは言っても、自分が高校生だったころは、こんな風に人を想うなんてことできなかっただろうな、と容易に想像がつく。
だいたい、制服ないし(違)、同学年の男子なんて恋愛対象でも、一緒に遊び歩く対象でもなかったからねえ。
そして、子をもつ親は大変なんだなあとひたすら思う。

主人公だけじゃなくて、周りの大人たちについても、描かれ方はあっさりだけど、同じくらい重要で大切。
たとえば、木島の母親の痛みやイラだちなども、すごくわかるし、似鳥ちゃんの「消えない男」っていう印象的な言葉も、木島の妹の恋愛の顛末とか…思い返すと盛りだくさんなんだけど必要充分に描かれていてとても上手い。
うまいって偉そうだけど、本当にそう思う。
だって、物足りないと思えないんだもの。

また語り手(視点)がいまどき?の高校生(みのりや木島)の言葉なのだけど、決して下品になりすぎず、かといってお行儀よすぎず絶妙。

10代にも読んで欲しいけれど、汚れちまったお父さんお母さんや大人たちにも充分染み入る作品だと思いました(苦笑)

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ざしきぼっこ > これって短編だったんですよ。表題作「黄色い目の魚」は15年ぐらい前アンソロジーの中の一編として書かれてたんです。(たぶん巻末に初出一覧が載ってますよね)私は当時読んでいたのに全く憶えてなくて(笑)。その短編から膨らませて、こんなに透明な連作長編にするなんてって思いました(←憶えてなかったくせに偉そう)
(2007/08/30 22:15)
ふりすか > ざしきぼっこさん。ええと、読む前は短編連作か長編だと思っていたので、最初の2章を読んで、まったくつながらない短編を集めたものなのか?と思ったんです。連作だと2つ目読むとわかるじゃないですか? 確かに、元の短編からここまでのものにするのって、すごいと思いました!! (2007/08/31 00:13)
three bells > >愛だの恋だのぬかすならこれぐらいの恋愛せえや!と言って渡したい
本当にそうですよね。
私は、汚れちまったお母さんの年になって読んで、こんなに純粋に生きてきてないよな〜と羨ましく思いました。
(2007/09/01 01:17)
まゆ > 私も親世代なのに、みのりと木島の恋にキュンとなっちゃいました(笑)佐藤多佳子さんがあとがきに書いていましたが、いずれ大人世代の話も書いてほしいです。通ちゃんと似鳥ちゃんとか・・・。 (2007/09/02 19:11)
ふりすか > three bellsさん。あ、わたしも「汚れちまった悲しみに〜」が脳内をグルグルでした(笑)
まゆさん。私も実は期待しています。あの大人たちの物語。テッセイと歩美の話なんてのも面白そうなんですけど。 (2007/09/04 09:57)